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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年10月11日

自信がつけば成績は上がるのか|学業の自己概念と成績の相互作用の研究

模試の返却日、武蔵境で子どもの学習を支える保護者が、答案を伏せたままの姿を見て、まず元気づけようと考える場面があります。「自信さえ戻れば勉強も進む」と思う一方で、解ける問題が増えないまま励ましてよいのか、言葉を選びかねることもあるでしょう。自信が先なのか、成績が先なのかという迷いには、何についての自信を見ているかが関わります。教科ごとの自己評価と成績には双方向の関連があり、気持ちだけを先に高めるより、学ぶ内容とできた事実を結びつけて支えることが研究に沿った考え方です。

この記事の要点
  • 自分全体への評価である自尊感情と、教科ごとの力に対する自己概念を分けて考えます。
  • 以前の自己評価と後の成績だけでなく、以前の成績と後の自己評価にも関連があります。
  • 自尊感情を高める働きかけを、成績を上げる方法として扱うことには研究上の問題があります。
  • 家庭では、取り組む内容、実際にできたこと、本人の受け止め方を一緒に記録します。

自信がつけば成績は上がるのか|学業の自己概念と成績の相互作用の研究

模試の返却日、武蔵境で子どもの学習を支える保護者が、答案を伏せたままの姿を見て、まず元気づけようと考える場面があります。「自信さえ戻れば勉強も進む」と思う一方で、解ける問題が増えないまま励ましてよいのか、言葉を選びかねることもあるでしょう。自信が先なのか、成績が先なのかという迷いには、何についての自信を見ているかが関わります。教科ごとの自己評価と成績には双方向の関連があり、気持ちだけを先に高めるより、学ぶ内容とできた事実を結びつけて支えることが研究に沿った考え方です。

「自分は大切な存在だと思うこと」と「数学の問題を解く力があると思うこと」は、同じ言葉で語られがちです。しかし、前者と後者では、成績との結びつきについて研究が示す結果が違います。模試の結果を受け止める際にも、子ども全体への評価と、教科で今できることを分けて扱うと、次に確かめる内容が具体的になります。励ましの言葉を増やすか減らすかに話を狭めず、答案に残った理解と本人の見方を並べて読むところから始めます。

要点

  • 自分全体への評価である自尊感情と、教科ごとの力に対する自己概念を分けて考えます。
  • 以前の自己評価と後の成績だけでなく、以前の成績と後の自己評価にも関連があります。
  • 自尊感情を高める働きかけを、成績を上げる方法として扱うことには研究上の問題があります。
  • 家庭では、取り組む内容、実際にできたこと、本人の受け止め方を一緒に記録します。

「自信」という言葉の中身を分ける

学業の自己概念とは、自分の学ぶ力について持っている見方です。「数学は得意だ」「英語を読むのは苦手だ」といった教科ごとの捉え方が、その例になります。対して自尊感情は、自分全体に対する価値や肯定的な評価を指します。どちらも日常では自信と呼ばれますが、テストの点に結びつくかを考えるときには、区別が必要です。

Marsh・Craven(2006)は、学業の自己概念と成績が互いを強めるという見方を、全体的な自尊感情に焦点を当てる見方と区別しました。この総説、つまり関連研究をまとめて論じた論文では、学業成績は学業の自己概念とかなり結びつく一方、自尊感情との結びつきはごく弱いと説明されています。見かけ上は「自信が役立つ」「自信を上げても成績は変わらない」という反対の結論でも、測っているものが違います。まず言葉の指す範囲をそろえると、研究同士の違いを読み解きやすくなります。

家庭でも、子どもが「自信がない」と言ったときに、その範囲を狭めて聞くと状況が見えてきます。計算の進め方に迷うのか、文章から式を作るのが難しいのか、教科の内容を手掛かりに言葉を補います。「勉強全体がだめ」という表現をそのまま能力の判定にせず、どの課題でそう感じたかを答案と照らし合わせます。これは気持ちを否定する作業ではなく、困っている場所を一緒に探す作業です。

たとえば、答えは違っていても、問題の条件を読み取り、必要な式を選べている場合があります。そのときは「数学ができない」という大きな判断と、答案にある途中の理解を分けて扱えます。逆に、正解していても理由を説明しにくければ、解き方を確かめる課題が残ります。教科ごとの自己評価を、正誤だけでなく解く過程と結びつけることが、家庭での観察の軸になります。

自己評価から後の成績への関係は小さい

Valentineら(2004)は、同じ人を時間を置いて追う縦断研究を、メタ分析という複数の研究結果をまとめて計算する方法で検討しました。最初の成績を考慮して、以前の自己評価が後の成績を予測する関係を見ると、平均の標準化された経路係数または回帰係数は.08でした。係数とは、測定値の尺度をそろえて関係の強さを表す数で、この結果は小さい正の関係を示します。自信を持つように励ました組と、励まさなかった組の得点差を測った数字ではありません。

同じValentineら(2004)の分析では、学業に範囲を絞った自己評価を使う場合に、関係が強くなりました。さらに、自己評価と成績が同じ教科について測られている場合にも、強い関係が見られました。「自分にはよいところがある」という全体的な見方より、「この教科で学ぶ力がある」という見方のほうが、学習の結果に対応しています。家庭で観察する場合も、数学についての気持ちは数学の取り組みと並べる、という読み方が筋に合います。

ただし、この追跡結果だけで、励まし方を変えれば同じ大きさの成績向上が起こるとは言えません。もともとの成績を考慮しても、学び方や周囲からの支えなど、自己評価と成績の両方に関わる要素は考えられます。研究の数字は、家庭でどれだけ点が上がるかを予告するものとしてではなく、何を一緒に見るべきかを示す材料として読みます。

ここから家庭向けに考えられるのは、本人の受け止め方を、学習の記録から切り離さない進め方です。解き直しの後で「前より取り組めそう」と言ったら、どの手順を理解したことがその感覚につながったのかを聞きます。言葉が前向きになったことと、問題を自分で進められたことを、それぞれ残します。気持ちの変化を大切にしつつ、次の学習で使える具体的な理解へつなぐことができます。

成績が自己評価を育てる向きもある

Huang(2011)は、互いに独立した39の縦断標本をまとめました。十分な標本がある関係について、以前の自己概念と後の学業成績の平均相関は.20〜.27、以前の学業成績と後の自己概念は.19〜.25でした。相関とは、一方が高い人ほど他方も高い傾向を表すもので、ここでは後の時点との関連を見ています。両方向で近い範囲の関連があり、自己評価だけが先に働くという一方向の理解では捉えきれない結果です。

この数字を読む際は、前節の分析と物差しの意味を混同しないことが大切です。Huang(2011)のここで挙げた値は観測された相関であり、Valentineら(2004)の、最初の成績を考慮した係数とは異なります。数字の大小を並べて研究の優劣を決めるより、何と何を、どのような条件で結びつけた値なのかを読みます。共通して注目できるのは、教科や学業に関する自己評価を、成績と一緒に追うという視点です。

Marsh・Craven(2006)は、学業の自己概念と成績が相互に関わる仕組みを論じています。Huang(2011)も、自己評価への支援と技能の発達を組み合わせることを提案しています。家庭の学習に置き直せば、子どもが前向きになるのを待つ間も、手を動かして確かめられる課題を用意する、という考え方になります。気持ちが整うまで学習を全面的に止めるか、気持ちを無視して課題だけを進めるかという選択にする必要はありません。

模試の答案なら、最終的な点から少し離れて、前は止まっていたところを今回は進めたかに目を向けます。問題文の意味を説明できた、途中式を自分で書けたなど、本人が確かめられる変化を探します。成績から自己評価へ向かう関係に着目すると、できた事実を本人が見落とさないようにする支え方が考えられます。結果を大きく言い換えず、実際に進められた範囲を共有することが出発点です。

全体的な自尊感情を高める話とは分けて読む

Baumeisterら(2003)は、自尊感情がさまざまな成果をもたらすという考えを検討しました。学校の成績との控えめな相関について、成績のよさが自尊感情を支える向きもあると論じています。また、生徒の自尊感情を高める働きかけは、学業成績の改善を示しておらず、場合によっては逆効果になりうると報告しています。ここで検討されているのは、自分全体への評価であり、教科の力に対する自己概念とは区別します。

この違いは、研究が何を比較したかを並べると捉えやすくなります。追跡研究では、以前の測定値と後の測定値の関係を見ています。自尊感情に関する総説では、自己評価と成果の関連に加えて、自尊感情を高めようとする働きかけの結果も検討しています。家庭の励ましを考える前に、次の表のように観察と働きかけを分けて読みます。

よく言われること 研究で示されたこと 比べたもの 対象となる見方
自信があれば後で伸びる 最初の成績を考慮すると小さい正の関係。Valentineら(2004) 以前の自己評価と後の成績 学業に関する自己評価を含む
成績が上がれば見方も変わる 両方向に関連。Huang(2011) 以前の自己概念と後の成績、その逆 学業の自己概念
自分を高く評価させれば成績も上がる 改善は示されず、逆効果の場合もある。Baumeisterら(2003) 自尊感情と成果の関連、働きかけ後の成果 全体的な自尊感情

励ましが学習から離れていないかを見る

Baumeisterら(2003)の指摘を家庭に置き直す際、見直したいのは、自分全体への高い評価を、学習の改善そのものとして扱う進め方です。「大丈夫、できる」と伝えた後に、何を学び直すかが決まっているかを見ます。解けなかった箇所への説明や練習が抜けたままなら、前向きな言葉と学習の課題が離れています。励ましをやめることより、励ましの先に本人が動ける内容を置くことが実務上の焦点です。

たとえば、本人が「計算の途中で迷う」と話しているのに、親が「もっと自信を持てばよい」と返し続ける場面を考えます。ここでは、子どもの言う困りごとと、大人の用意した解決策が一致していません。まず止まった式を見て、どの操作を選べなかったのかを確認するほうが、教科の課題に対応しています。自信の不足という大きな説明だけで終えると、必要な支援を具体化しにくくなります。

反対に、本人が「もうわかった」と言っていても、解く際には説明が必要なことがあります。この場合も、本人の言葉を否定して自信を下げることを目的にしません。どこまで自力で進み、どこで助けが必要になったかを、一緒に確かめます。自己評価を高くするか低くするかではなく、学習の現状を自分で捉えられるようにすることを目指します。

特に、気持ちを言葉にすることが苦手な子や、評価を聞かれること自体を負担に感じる子には、自信について繰り返し答えさせる進め方は避けたいところです。これは家庭での運用上の配慮として、本人の反応を見て調整します。「自信がついた」と言うことを学習の終了条件にせず、答案や説明からできた箇所を確かめます。子どもが言葉を探している間も、学ぶ内容への支援は続けられます。

家庭では、できた事実と本人の見方を並べる

家庭で試す手順は、研究の相互的な見方をもとにした観察の提案です。まず、模試の答案から、本人が取り組み直せそうな内容を選びます。教科全体を得意にするという目標より、条件を式にする、途中の計算を説明するなど、終わったかを確かめられる課題にします。本人がどこで困っていると感じたかも、始める前に短く聞いておきます。

次に、説明を読んだ直後の理解と、自分で解ける状態を分けて記録します。解説を見ながらなら進められたのか、手掛かりを閉じても進められたのかを残します。解けたときには、どの部分が以前と変わったかを本人と照らし合わせます。難しかったときには、自信が足りなかったと結論づけず、必要な説明や課題の大きさを見直します。

観察する項目は、次のようにそろえておくと振り返りやすくなります。記録は親の採点表にせず、次の学習内容を決めるために使います。本人が書く負担を感じる場合は、親が短く残し、内容が合っているかを確かめます。

振り返りでは、実際には解けるようになったのに苦手という見方が続いているのか、気持ちは前向きでも同じ箇所で止まるのかを見ます。前者なら、できた答案を並べ、本人が変化をどう受け止めているかを聞けます。後者なら、説明の理解や練習する内容を改めて確かめられます。気持ちと結果のどちらかだけで判断しないことが、次の支援を選ぶ材料になります。

学校や塾に学習状況を相談するときも、この記録を使えます。「自信をつけてほしい」という希望に、どの内容で手が止まるか、何なら自分で進められるかを添えます。支える大人同士で見る対象をそろえると、本人に必要な説明を話し合いやすくなります。自信を先に完成させるのを待たず、確かめられた理解を次の課題へつないでいきます。

よくある質問

自信がないと言ううちは、難しい問題を避けたほうがよいですか

難しいと感じる中身を確かめ、本人が手をつけられる範囲に分けることを考えます。問題全体は難しくても、条件を読み取るところなら進められる場合があります。そこを出発点に、必要な説明を補い、どこまで自力で進んだかを残します。自信があると言えるかどうかだけで問題を選ぶと、今の理解を見落としやすいので、取り組んだ過程も合わせて見ます。

成績がよくなれば、自分のことも好きになりますか

教科の力についての見方と、自分全体への評価は分けて考えます。Marsh・Craven(2006)が示した区別では、学業成績と強く結びつくのは学業の自己概念です。数学でできることが増えた変化は数学の理解として確かめ、子ども自身を大切にする関わりは点数を条件にせず続けます。成績を、自分全体の価値を決める尺度として使わないことが大切です。

前向きになったのに、点が伸びないときは何を見ますか

取り組んだ内容と、試験で問われた内容を並べ、どの理解が答案に表れたかを見ます。解説を読めば納得できる状態と、自分で解き方を選べる状態も分けて確かめます。前向きな言葉はそのまま受け止めたうえで、途中式や説明から次の練習を決めます。点だけで気持ちの変化を取り消さず、気持ちの変化だけで学習が仕上がったとも判断しない進め方です。

この記事の限界

対象は海外の学習者を含む研究群で、年齢や追跡期間、自己評価の測り方がそろっておらず、日本の小中高生が塾で学ぶ場合の変化を直接確かめた結果ではありません。縦断研究による関連の推定と総説を中心に読んでいるため、家庭での具体的な働きかけの効果には不確かさが残ります。

学習のつまずきが続く場合は、学校の先生などと答案や取り組みの記録を共有し、説明の内容や課題の段階を相談することが大切です。自己評価の低下が生活全体の困りごとにも及ぶ場合は専門家への相談も考えながら、本人が今できることを確かめ、次に学ぶ内容を選んでいきます。 子どもが「この教科はできない」と話したとき、今回の答案から一緒に確かめられる理解はどこにありますか。

参考文献

  1. Valentine JC, DuBois DL, Cooper H. The Relation Between Self-Beliefs and Academic Achievement: A Meta-Analytic Review. Educational Psychologist. 2004;39(2):111-133. doi:10.1207/s15326985ep3902_3
  2. Huang C. Self-concept and academic achievement: A meta-analysis of longitudinal relations. Journal of School Psychology. 2011;49(5):505-528. doi:10.1016/j.jsp.2011.07.001
  3. Marsh HW, Craven RG. Reciprocal Effects of Self-Concept and Performance From a Multidimensional Perspective: Beyond Seductive Pleasure and Unidimensional Perspectives. Perspectives on Psychological Science. 2006;1(2):133-163. doi:10.1111/j.1745-6916.2006.00010.x
  4. Baumeister RF, Campbell JD, Krueger JI, Vohs KD. Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success, Happiness, or Healthier Lifestyles? Psychological Science in the Public Interest. 2003;4(1):1-44. doi:10.1111/1529-1006.01431

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よくある質問

自信がないと言ううちは、難しい問題を避けたほうがよいですか

難しいと感じる中身を確かめ、本人が手をつけられる範囲に分けることを考えます。問題全体は難しくても、条件を読み取るところなら進められる場合があります。そこを出発点に、必要な説明を補い、どこまで自力で進んだかを残します。自信があると言えるかどうかだけで問題を選ぶと、今の理解を見落としやすいので、取り組んだ過程も合わせて見ます。

成績がよくなれば、自分のことも好きになりますか

教科の力についての見方と、自分全体への評価は分けて考えます。Marsh・Craven(2006)が示した区別では、学業成績と強く結びつくのは学業の自己概念です。数学でできることが増えた変化は数学の理解として確かめ、子ども自身を大切にする関わりは点数を条件にせず続けます。成績を、自分全体の価値を決める尺度として使わないことが大切です。

前向きになったのに、点が伸びないときは何を見ますか

取り組んだ内容と、試験で問われた内容を並べ、どの理解が答案に表れたかを見ます。解説を読めば納得できる状態と、自分で解き方を選べる状態も分けて確かめます。前向きな言葉はそのまま受け止めたうえで、途中式や説明から次の練習を決めます。点だけで気持ちの変化を取り消さず、気持ちの変化だけで学習が仕上がったとも判断しない進め方です。