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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年10月11日

家庭教師や塾で成績は上がるのか|補習教育の効果と選抜の偏りの研究

「効果は、せいぜい控えめにとどまる」。韓国の中学生を調べたRyu・Kang(2013)の結論の一節を訳すと、自宅の食卓で答案を広げ、武蔵境で学習の助けを探す保護者には気になる言葉です。家庭教師や塾を加えると、本当に成績は上がるのでしょうか。成績が上がる条件はありますが、通っている子の成績の高さと、通うことで増えた伸びを分けて読むことが大切です。

この記事の要点
  • 通っている子と通っていない子には、始める前の学力や学習目的の違いがあります。
  • 米国の入試対策研究では、講座型と家庭教師型で結果が異なりました。
  • 韓国の中学生では、支出の増加による成績への効果は控えめと推定されました。
  • 中国では平均と一部の生徒の結果が異なり、ドイツでは長く続けるほど伸びる傾向が支持されませんでした。
  • 家庭では開始前の答案、支援の内容、自力で解いた結果を合わせて記録します。

家庭教師や塾で成績は上がるのか|補習教育の効果と選抜の偏りの研究

「効果は、せいぜい控えめにとどまる」。韓国の中学生を調べたRyu・Kang(2013)の結論の一節を訳すと、自宅の食卓で答案を広げ、武蔵境で学習の助けを探す保護者には気になる言葉です。家庭教師や塾を加えると、本当に成績は上がるのでしょうか。成績が上がる条件はありますが、通っている子の成績の高さと、通うことで増えた伸びを分けて読むことが大切です。

学校の外で受ける有償の補習を、研究では「影の教育(シャドーエデュケーション)」と呼びます。学校で学ぶ内容や試験に沿って、家庭教師や講座などで学習を補う営みを指します。調べたいのは、その学習を加えたことによる変化です。もともとの理解度や家庭で勉強する習慣まで違う子を並べると、補習そのものの働きが見えにくくなります。

判断の出発点は、評判のよい方法を探すことだけではありません。子どもが今どこで止まっているのか、何が変われば助けになったと判断するのかを言葉にすることも必要です。海外の追跡調査が示す結果を、比較する相手、伸びの大きさ、続ける期間の順に読むと、家庭で残しておきたい記録が見えてきます。

要点

  • 通っている子と通っていない子には、始める前の学力や学習目的の違いがあります。
  • 米国の入試対策研究では、講座型と家庭教師型で結果が異なりました。
  • 韓国の中学生では、支出の増加による成績への効果は控えめと推定されました。
  • 中国では平均と一部の生徒の結果が異なり、ドイツでは長く続けるほど伸びる傾向が支持されませんでした。
  • 家庭では開始前の答案、支援の内容、自力で解いた結果を合わせて記録します。

通っている子の成績だけでは、補習の働きが見えない

成績がよい子が塾に通っていると聞けば、同じように学べば伸びそうだと感じます。ところが、その子が通い始める前から得意だったなら、今の点数には以前からの力も含まれます。家庭で復習する習慣や、難しい問題に取り組みたいという目的も関係するでしょう。このように、補習を選ぶ段階で利用する子と利用しない子の特徴が偏ることを「選抜の偏り」と呼びます。

たとえば、学校の内容を理解したうえで、さらに先の課題に進みたい子が補習を選ぶ場合を考えます。その子と、現在の授業内容を身につける途中の子の成績を比べれば、補習の前からある差も結果に入ります。通った後の点数だけを見て、その差の全体を補習の効果と扱うと、働きを大きく見積もります。比較では、出発点の近い子をそろえる工夫が要ります。

反対に、成績が下がったことをきっかけに学習の助けを求める子もいます。この場合には、補習を利用している子のほうが低い点数になることも考えられます。それでも、利用前より理解が進んでいる可能性は残ります。利用の有無で並べたときの順位と、利用によって生じた変化は別の問いです。

研究者は、始める前の成績や家庭の特徴を分析に加え、比較を公平に近づけようとします。ここでいう「調整」は、条件の違いが結果に混ざる影響を統計的に扱うことです。保護者が研究を読む際も、結論の強さより先に、何をそろえて比べたのかを見ると筋道を追えます。家庭であれば、始める前の答案や学習の様子を残すことが、その発想を使う入口になります。

米国の入試対策では、目的と学び方で結果が異なった

Byun・Park(2012)は、米国の生徒を追う教育調査を使い、大学入試に用いられる試験の対策を調べました。扱ったのは、商業的な講座型の対策と、家庭教師による個人指導です。東アジア系の生徒は、力をさらに伸ばす目的で講座を利用する傾向が強く、その講座型の対策から最も大きな恩恵を得ていました。補習を利用したかどうかに加えて、何を目指して利用したかが読みどころです。

同じ調査では、家庭教師型の対策の効果は、東アジア系を含むどの人種・民族集団でもごく小さいという結果でした。Byun・Park(2012)が示したのは、入試対策の参加状況や目的を区別して読む必要性です。個人指導という呼び方だけで、講座型より大きな成果が見込めるとは判断できません。講座の利用目的と家庭教師を必要とした事情まで含めて、結果の違いを読むことになります。

この違いを家庭の選択に置き直すなら、何を埋めたいのかを先に書き出します。学校の説明の途中で止まるのか、理解した内容を問題で使えないのか、入試の出題に慣れたいのかで、求める支援は変わります。「教えてもらう」という同じ言葉でも、学習の出発点と到着点には幅があります。呼び名の比較だけでは、その幅が隠れてしまいます。

講座で伸びた集団があることと、個人指導で大きな差が出なかったことは、どちらも研究の結果です。都合のよい片方だけを選ぶと、利用者の目的の違いを落とします。自分の子については、支援の内容が今の課題につながっているかを確かめる必要があります。指導中によく答えられることに加え、その後の自力の答案まで見れば、目指す変化との距離を追いやすくなります。

韓国の研究が示した、支出の増加と伸びの大きさ

Ryu・Kang(2013)は、韓国の中学生の追跡データから、補習への支出と成績の関係を調べました。支出が多い家庭と少ない家庭の点数をそのまま比べるのではなく、いくつかの方法で条件の違いを扱っています。ここでは、補習への支出を増やすことに対応する、テスト成績の変化が分析の対象です。補習を全く使わない状態から使い始めることと、すでにある支出を増やすことは区別して読みます。

Ryu・Kang(2013)では、支出が10%増えた場合の推定値は、操作変数法で0.03標準偏差、階差法で0.002標準偏差でした。操作変数法は支出に関わる別の要因を利用して影響を取り出そうとする方法で、階差法は同じ生徒の時点間の変化に注目する方法です。標準偏差とは、点数のばらつきの大きさを表す物差しで、異なる点数尺度の差を読む際に使われます。分析の方法によって推定値に違いがあり、著者らは効果を控えめと評価しました。

さらにRyu・Kang(2013)は、分析上の条件から効果が取りうる範囲を絞る方法も使いました。支出10%増に対応するテスト得点の改善は、下限0%、上限2.01%という範囲でした。統計的な検定では、効果がゼロである可能性を排除できなかったと報告しています。これは推定の不確かさを含む結果であり、上限をそのまま期待する伸びに置き換える読み方は避けます。

家庭の判断では、この結果を、支出を増やすほど学習の成果も同じ調子で増えるという期待の点検に使えます。増やす前に、今の学習で何が足りないのかを確かめます。説明を聞く時間を増やしたいのか、解いた後の間違いを直す助けが必要なのかを分けると、追加する内容が具体的になります。量の変更と課題への対応を結びつければ、後から何を見直すべきかもはっきりします。

平均の結果と、伸びた生徒の条件を並べて読む

Zhang(2013)は、中国の済南で集めた2010年のデータを用いて、補習と大学入試の成績を調べました。平均の効果は統計的に有意ではありませんでした。「有意」とは、差がないという想定のもとで偶然のばらつきだけでは説明しにくいと判断されたことです。一方、都市部の成績の低い生徒や、特定の学校条件の生徒では、正の効果が見られる可能性を示しました。

Zhang(2013)が報告した違いには、学校の教育への投入が多いほど、補習から恩恵を得やすい傾向も含まれます。補習の働きは、学校で得られる学習機会との組み合わせで読む必要があります。平均が有意でないという結論と、一部の条件で正の効果が見られるという結論は、見る範囲が違います。対象を狭めた結果を全員へ広げることも、平均だけで個別の可能性を消すことも、比較の中身を飛ばした判断です。

よく言われること 研究で得られた結果 比較の軸 対象
個人指導なら大きく伸びる 講座型と家庭教師型で結果が異なる 対策の利用状況・目的と成績 米国の大学入試対策、Byun・Park(2012)
支出を増やせば成績も伸びる 推定された効果は控えめ 支出の増加と得点の変化 韓国の中学生、Ryu・Kang(2013)
補習の効果は全員に共通する 平均と一部の条件で結果が異なる 補習の利用と成績、学校・生徒の条件 中国の大学入試、Zhang(2013)
長く続けるほど伸びる 期間による一貫した正の効果なし 以前の知識などを調整した期間の違い ドイツの中等教育段階、Ömeroğullarıほか(2020)

続ける期間より、変わった内容を確かめる

Ömeroğullarıほか(2020)は、ドイツの中等教育段階の生徒約8000人を含む追跡調査を分析しました。以前の知識、学習への意欲、社会的・人口学的な特徴を調整し、補習を続ける期間と教科の成績やテスト得点の関係を調べています。結果は、期間が長いほど成績が上がるという一貫した正の効果を示しませんでした。長く続いているという事実そのものを、成果の代わりにはできないという読み方になります。

保護者が確認したいのは、続けた期間の中で、どのつまずきが動いたかです。以前は問題文から式を作れなかった子が、今は式を立てて計算まで進めるなら、変化を具体的に説明できます。点数が横ばいでも、出題範囲や問題の難しさが変わっていれば、答案に残る学習内容を合わせて見ます。反対に、毎回同じ箇所で止まっているなら、期間を延ばす判断より先に扱う内容を見直します。

家庭で注意したい逆効果の筋道は、補習を足した結果、理解を確かめる余裕がなくなることです。これは研究で測った害の結論ではなく、予定を組む際の点検項目です。帰宅後に疲れ切って解き直せない子や、課題を終えることだけで精いっぱいの子には、学習の追加が今の困り方に合わない場合があります。予定表に収まるかに加えて、終わった後に自分で考える時間が残るかも見ます。

不安が強い子に、学習の成果を毎日問い詰める形で記録を求めることも避けたいところです。記録は子どもを評価するためだけでなく、支援の内容が合っているかを大人が見直すために使います。本人が説明しやすい答案を選び、解けた部分と止まった部分を一緒に確認します。続けるかどうかを子どもの根性の問題にせず、今の計画を調整する材料にします。

家庭で残すのは、始める前と自力で解いた後の記録

ここからは、研究の比較の考え方を家庭で使うための手順です。まず、成績を上げたいという目標を、実際の問題に結びつけます。「文章題を読んで式を作る」「英文の文の構造を説明する」など、答案で確かめられる形にします。苦手という大きな言葉を小さくすると、必要な支援も、後で見る成果も具体的になります。

開始前には、直近の答案を残し、どこまで自分で進めたかを短く書き添えます。途中で説明を受けたのか、答えを見てから解き直したのかも分けます。学校の授業の進み方や家庭で使った教材に変化があれば、同じ記録に加えます。後から点数が変わったときに、その間に加わった学習を思い出す助けになります。

学んだ後には、教えてもらった問題の答えを覚えているかだけでなく、同じ考え方を使う別の問題を自力で解く様子を見ます。問題の難しさが極端に変わらないようにし、途中の考え方も残します。正解でも説明の助けが要るのか、間違えたが自分で修正できるのかで、次に必要な支援は異なります。点数と学び方を合わせて見る記録にします。

  • 始める前に、困っている教科と問題の種類を絞ってある。
  • 比較に使う答案には、解いた日と助けの有無が残っている。
  • 補習で実際に扱った内容を、本人の言葉で確かめている。
  • 自力で解いた結果と、学校や家庭の学習の変更を並べている。
  • 負担が増えたときに、内容や予定を調整する余地がある。

見直す時期は、取り組む単元や学校の学習の区切りに合わせて決めます。成果が見えれば、何が助けになったのかを本人と確かめ、次の課題を絞ります。変化が乏しければ、課題の選び方、説明後の練習、日々の負担を順に見直します。家庭教師や塾を使う意味は、通ったという事実より、必要だった学習が進んだかどうかに置くと判断しやすくなります。

よくある質問

成績がよい友人と同じ学び方を選べばよいですか

友人の成績だけで決めず、始める前の理解度と学習目的を照らし合わせます。得意分野を伸ばしたい子と、授業の途中から理解を立て直したい子では、必要な助けが異なります。本人の答案から止まる箇所を選び、その学び方が何を補うのかを確かめると、判断が具体的になります。友人の結果は候補を知るきっかけにし、開始後は自分の子の変化を見て調整します。

効果が小さいなら、家庭教師や塾は使わないほうがよいですか

平均の効果の大きさだけで、家庭の選択を決める必要はありません。研究が示すのは、どの対象に、どの比較で、どの程度の差があったかです。家庭では、必要な説明や解き直しの助けが得られているかと、その後に自力で進める範囲が広がったかを確かめます。具体的な課題への支援と生活上の負担を並べると、続ける、内容を変える、いったん減らすという判断をしやすくなります。

どれくらい続けてから見直せばよいですか

期間だけを目安にせず、取り組む内容と見直す場面を先に決めます。単元の学習が進んだ時や、同じ考え方の問題を自力で解いた時など、変化を確かめやすい区切りを使います。点数に加えて、説明が必要だった箇所や自分で直せた間違いを残すと、次の調整につながります。家庭での確認は、答案に短い記録を添える形から無理なく試せます。

この記事の限界

適用範囲は、米国・中国の大学入試対策、韓国の中学生、ドイツの中等教育段階の補習を扱った研究に基づき、日本の小中高生の塾利用を直接測ったものではありません。扱った追跡期間や試験は研究ごとに異なり、同じ期間の効果としてそろえた比較でもありません。

条件を調整した観察研究にも測定されていない違いが残るため、個人の成績がどれほど伸びるかを保証する根拠にはできません。学習のつまずきや不安が続く場合は、答案と負担の記録を学校の先生や専門家との相談に役立て、支援の見直しを無理なく試せます。 始める前の答案と今の答案を並べたとき、以前は助けが必要で今は自力で進める箇所を挙げられますか。

参考文献

  1. Byun SY, Park H. The Academic Success of East Asian American Youth: The Role of Shadow Education. Sociology of Education. 2012;85(1):40-60. doi:10.1177/0038040711417009
  2. Ryu D, Kang C. Do Private Tutoring Expenditures Raise Academic Performance? Evidence from Middle School Students in South Korea. Asian Economic Journal. 2013;27(1):59-83. doi:10.1111/asej.12002
  3. Zhang Y. Does private tutoring improve students’ National College Entrance Exam performance? A case study from Jinan, China. Economics of Education Review. 2013;32:1-28. doi:10.1016/j.econedurev.2012.09.008
  4. Ömeroğulları M, Guill K, Köller O. Effectiveness of private tutoring during secondary schooling in Germany: Do the duration of private tutoring and tutor qualification affect school achievement? Learning and Instruction. 2020;66:101306. doi:10.1016/j.learninstruc.2020.101306

わからなくなった単元まで、講師と二人で戻ってやり直す。

  • 向く人: 集団授業で質問できないまま進み、どこでつまずいたのか分からなくなった中学生・高校生
  • 向く人: 苦手な科目を、つまずいた単元まで戻って一対一でやり直したい人
  • 向かない人: 大勢と競い合う中で力が出る子や、集団授業の速い進度を求める人
  • 向かない人: 塾に通うだけで成績が変わると考え、家で手を動かす時間を取れない人

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よくある質問

成績がよい友人と同じ学び方を選べばよいですか

友人の成績だけで決めず、始める前の理解度と学習目的を照らし合わせます。得意分野を伸ばしたい子と、授業の途中から理解を立て直したい子では、必要な助けが異なります。本人の答案から止まる箇所を選び、その学び方が何を補うのかを確かめると、判断が具体的になります。友人の結果は候補を知るきっかけにし、開始後は自分の子の変化を見て調整します。

効果が小さいなら、家庭教師や塾は使わないほうがよいですか

平均の効果の大きさだけで、家庭の選択を決める必要はありません。研究が示すのは、どの対象に、どの比較で、どの程度の差があったかです。家庭では、必要な説明や解き直しの助けが得られているかと、その後に自力で進める範囲が広がったかを確かめます。具体的な課題への支援と生活上の負担を並べると、続ける、内容を変える、いったん減らすという判断をしやすくなります。

どれくらい続けてから見直せばよいですか

期間だけを目安にせず、取り組む内容と見直す場面を先に決めます。単元の学習が進んだ時や、同じ考え方の問題を自力で解いた時など、変化を確かめやすい区切りを使います。点数に加えて、説明が必要だった箇所や自分で直せた間違いを残すと、次の調整につながります。家庭での確認は、答案に短い記録を添える形から無理なく試せます。