- 遠隔の指導で学力が上がることと、対面と同じ成果が出ることは、別の問いです。
- オンラインと対面の併用で見られた差には、学習時間や教材の違いも関わります。
- 指導を加えた組との比較では、成果が出た研究も、差が明確でなかった研究もあります。
- 家庭では説明の聞きやすさに加え、自分で解く過程、質問、授業後の学習を記録します。
オンラインの個別指導は対面と同じように伸びるか|遠隔の家庭教師の研究
0.07標準偏差という数学の差が、Kraftら(2022)のオンライン個別指導の研究で報告されています。標準偏差は点数のばらつきを表す物差しで、この差は統計的に有意ではなく、偶然のばらつきと区別できるほど明確な結果ではありませんでした。武蔵境で送迎や部活との両立を考える保護者がオンライン授業の画面を見るときも、説明を聞けることと、学力が伸びることの間をどう確かめるかが気になります。家から学べる便利さがあっても、対面と同じように力がつくのでしょうか。
オンラインでも学力が上がった研究はありますが、対面と同じ伸びを約束する根拠とは分けて読み、指導の中身と続けられる条件で判断することが大切です。 画面を使う授業には、説明を視聴する形も、その場で解き方を見てもらう形もあります。さらに、対面にオンラインを足す授業と、すべてを遠隔で行う授業も別の条件です。「オンラインだから」という言葉の中に何が含まれるかをほどくと、家庭で確かめる点が具体的になります。
要点
- 遠隔の指導で学力が上がることと、対面と同じ成果が出ることは、別の問いです。
- オンラインと対面の併用で見られた差には、学習時間や教材の違いも関わります。
- 指導を加えた組との比較では、成果が出た研究も、差が明確でなかった研究もあります。
- 家庭では説明の聞きやすさに加え、自分で解く過程、質問、授業後の学習を記録します。
画面か教室かを比べる前に、授業の中身をそろえる
「対面なら目が届く」「オンラインなら自宅で落ち着ける」という説明は、学ぶ場面を思い浮かべる助けになります。ただし、成績の比較をする際には、場所と指導内容を分ける必要があります。対面で問題を解いている時間と、オンラインで説明を聞いている時間を比べれば、場所のほかに学習活動も変わっています。同じ教科名が付いていても、取り組む課題や理解の確かめ方まで同じとは限りません。
Meansら(2013)は、オンライン学習と対面授業を比べた研究を、メタ分析という、複数の研究の結果をまとめて計算する方法で検討しました。ここで扱ったのは個別指導だけでなく、授業全体の学び方です。完全にオンラインで学ぶ形と、対面とオンラインを組み合わせる形を分けて読むことが、この研究を理解する出発点になります。家庭教師とのやり取りだけを想像すると、比較の範囲がずれてしまいます。
保護者が比較する際には、「どこで学ぶか」の隣に「何をするか」を書き出すと整理しやすくなります。説明を聞く、子どもが解く、途中の考え方を伝える、誤りを直すという流れを、候補ごとに確かめます。講師が話す時間ばかりなのか、子どもの考えを受けて説明を変えるのかも、授業の中身です。画面越しに声が聞こえることだけで、学びのやり取りまで評価しないようにします。
比較の目的も先にそろえておきます。学校の課題を進めたい場合と、理解が止まっている単元を戻って学びたい場合では、必要な支援が違います。たとえば計算の誤りを直すことが目的なら、正解したかだけでなく、途中式を見て修正できるかが観察点になります。形式を選ぶ前に困り事を言葉にすると、便利さと学習の成果を同じ項目で判断せずに済みます。
成果が出た遠隔指導は、学習支援を加えた取り組み
Gortazarら(2024)は、スペインの社会経済的に不利な地域の中学生を対象に、放課後のオンライン数学指導を調べました。無作為化比較試験という、くじ引きのように組を分けて取り組みの効果を比べる方法を使っています。資格のある数学教員が生徒を組にして集中的に教え、指導を加えた組では、対照となる組より標準テストと学年末の数学の成績が上がりました。標準テストは、共通の条件で学力を測る試験を指し、この研究では留年する可能性も下がったと報告されています。
この結果の中心は、画面越しにも学習を支えるやり取りが成り立ち、学力の変化につながった点です。評価したのはオンラインの数学支援を含む取り組み全体であり、画面という道具だけの働きではありません。放課後に継続して学ぶ場、教える内容、生徒への関わり方が一緒に組み込まれています。遠隔だから学力に結びつかないと考えるより、どのような授業なら学習が進むかへ目を向ける材料になります。
家庭でこの結果を読むなら、教える人の肩書だけを抜き出すより、指導がどのようにつながるかを確かめたいところです。前の授業で止まった箇所が次に引き継がれるか、解けた課題の後に何へ進むかを見ます。予定どおり参加できるかも、学ぶ機会を積み重ねるうえでの確認事項です。画面に向かった日の印象に加え、授業をまたいだ進み方を残すと、実際の支援が見えやすくなります。
Gortazarら(2024)の比較相手は、同じ指導を対面で行った組ではありません。したがって、この研究から対面と同じ伸びだと結論づけることはできません。オンラインの支援を加える意義を示す研究として読み、形式どうしの優劣は別の比較で検討する必要があります。
対面との比較では、併用と完全オンラインを分ける
Meansら(2013)の統合では、オンラインを含む学習は平均すると対面よりややよい結果でした。ところが、条件を分けると、統計的に有意な差があったのは対面とオンラインを組み合わせた形です。完全オンラインと対面の比較では、差は有意ではありませんでした。全体の平均だけを見て、家で画面を使えば対面を上回ると読むと、併用の結果まで完全オンラインに移してしまいます。
さらにMeansら(2013)は、併用する組に学習時間や教材などの違いが含まれることを指摘しています。対面授業に別の学習活動を足した結果なら、伸びの差には追加された練習も関わり得ます。授業の場所を置き換えた比較と、学習機会を追加した比較では、答えられる問いが違います。形式だけの効果を考えるには、こうした条件をそろえて読む必要があります。
| よく言われること | 研究で捉えられること | 比べた相手 | 対象・出典 |
|---|---|---|---|
| 遠隔でも学力は伸びる | 数学支援を加えた組でテストと成績が向上 | 支援を加えない対照群 | スペインの中学生、Gortazarら(2024) |
| オンラインは対面よりよい | 明確な差は対面との併用で見られた | 対面のみの授業 | 学校・大学・専門的訓練など、Meansら(2013) |
| 個別に教われば成果は明確に出る | 学力への差が有意でなかった遠隔指導もある | 支援を加えない対照群 | 米国の中学生、Kraftら(2022) |
家庭の比較表にも、形式の欄とは別に、授業内で解く課題と授業外の学習を書くと役立ちます。オンラインに変えて課題が増えたなら、伸びを考えるときにその変化も一緒に扱います。反対に、移動が減っても授業後の学習がなくなれば、日々の学び方は別の形になります。どちらを選ぶ場合も、実際に続いた学習内容を軸に振り返ります。
差が小さかった研究を、失敗の決めつけに使わない
Kraftら(2022)は、米国の中学生と大学生ボランティアを組み合わせたオンライン個別指導を、試行的な無作為化比較試験で調べました。新型コロナウイルス感染症の流行下で行われた支援で、対照群と比べた学力の差は、数学が0.07標準偏差、読みが0.04標準偏差でした。差の向きはいずれも正でしたが、統計的に有意ではありませんでした。効果量、つまり点数のばらつきを共通の物差しにした差の大きさは、正の値であることと、効果の存在をはっきり示すことを分けて読みます。
「有意でない」は、すべての子に変化がなかったという意味ではありません。調べた集団の差とその不確かさを踏まえると、偶然のばらつきと区別するだけの明確さがなかったという意味です。反対に、数字が正だから有効だと断言する読み方も避けます。結果を小さく見せるためでも大きく見せるためでもなく、何が示されたかの強さを保つ読み方です。
Kraftら(2022)の研究と、成果が見られたGortazarら(2024)の研究は、実施された地域や対象、支援の組み立てが違います。両方ともオンラインという共通点がありますが、同じ子に同じ課題を別の方法で教えた比較ではありません。結果の違いを講師の種類だけの差に置き換えず、どの頻度で学ぶ機会があり、どんな課題に取り組み、どう継続するかをまとめて見る必要があります。画面か対面かより、そうした条件が成果を左右する可能性を考える材料です。
子どもの成績がすぐ変わらないときも、この区別が役立ちます。形式を変えれば解決すると急ぐ前に、理解を確かめる機会があったか、習ったことを自分で使えたかをたどります。質問が残っているなら質問への対応を、授業が途切れているなら続け方を見直します。成果が明確でない状態を本人の性格の問題にせず、変更する条件を具体化していきます。
向き不向きは、質問と授業後の行動から考える
Hardtら(2023)は、感染症の流行でオンライン授業を行っていたドイツの大学で、先輩学生による少人数の遠隔指導を調べました。支援を提供する組と対照群を無作為に分けた研究で、支援を受けた組では学習行動が改善したと報告されています。学びの変化を見る際に、試験の点だけでなく、その前にある行動にも目を向ける材料です。授業後に何へ取り組むかが定まることも、遠隔で支える働きの一部として捉えられます。
家庭で見る項目に置き直すなら、授業の終わりに次の課題を本人が説明できるかが候補になります。たとえば、何を解き直すのか、どの箇所を質問するのかが本人の言葉で出てくるかを見ます。画面を閉じた後に手が止まるなら、説明は聞けても次の行動が曖昧な可能性があります。こうした観察は、形式の好みと実際の学習をつなぐための家庭向けの提案です。
一方、画面越しに話すと緊張して疑問を伝えにくい子には、質問を残す方法から検討します。声で割り込む以外にも、解いた内容と一緒に疑問を伝えるなど、本人が使える方法を確かめます。画面を見る負担や通信の途切れについても、ここで挙げた研究の効果とは分けて、本人の様子として記録します。機器の設定手順よりも、学習を続けるうえで何が妨げになっているかを捉えることが目的です。
たとえば、聞き取れなかった箇所を言い出せず、その後の説明を受け身で追うだけになる状態は、見直したい兆候です。通う負担を減らしたつもりでも、理解が止まったまま課題だけが積み重なれば、負担が増す可能性があります。これは研究で示された逆効果の数値ではなく、家庭で点検するための想定です。静かに座れていることを理解の証拠にせず、子どもが質問や修正に参加できる形を探します。
家庭では同じ課題と短い記録で変化を確かめる
始めに、今の困り事を課題の形にします。「数学全体が苦手」だけでは、説明を理解したいのか、自力で解き切りたいのかが曖昧です。「途中までは進むが、その後の式を選べない」のように、手が止まる箇所まで絞ります。そのうえで、授業中の支援と授業後の自力での取り組みを分けて見ます。
授業中は、答えを聞いて納得した場面だけでなく、本人が考えを伝えた場面を残します。授業後には、学んだ内容に近い課題を、説明を見続けずに進められるかを確かめます。まったく同じ答えを覚えているかだけで判断せず、解き方を選んだ理由を短く話してもらうと、理解の様子を捉えやすくなります。保護者が正しさをすべて判定する必要はなく、止まったところを次の指導へ渡す記録にします。
- 今回取り組む課題と、本人が困っている箇所を言葉にする。
- 授業中に考え方を伝え、誤りを直せた場面を残す。
- 授業後に自分で進められた範囲と、質問が残った箇所を書く。
- 参加のしやすさ、疲れ、予定の変更を学習内容と別に記録する。
- 次に変える条件を決め、似た難しさの課題で様子を見る。
記録を読むときは、予定した授業と実際に続いた授業を区別します。部活後に無理なく参加できたか、忙しい時期に学習の間隔が空いたかなども、形式を選ぶための材料です。オンラインでも対面でも、説明を聞く機会だけが増え、使う機会が減っていれば、課題の進め方を調整します。続けやすさと理解の変化を別々に記すと、何を残して何を変えるかが見えます。
対面から遠隔へ変える場合は、できる範囲で目的や課題の難しさをそろえて振り返ります。点数の変化に加え、前は助けが必要だった箇所を自分で進められるようになったかを見ます。家庭の記録は子どもを採点するためではなく、支援の届き方を調整するために使います。画面越しでも考えを伝え、次の学習へ進める条件を、本人の言葉と課題の記録から選んでいきます。
よくある質問
対面との差が有意でないなら、同じ効果と考えてよいですか
差が有意でない結果と、同じ程度の効果が確かめられた結果は区別します。Meansら(2013)の完全オンラインと対面の比較は、差が明確に出なかったという読み方になります。同等と言うためには、どの程度の差まで同等とみなすかを決め、その範囲に収まるかを調べる必要があります。家庭で選ぶ際には、同じという言葉だけで安心せず、課題への取り組みと続けやすさを見比べます。
通う時間が減れば、その分だけ成績も上がりますか
移動が減って生まれた時間を、実際に何へ使えるかを考えます。休息に回せるのか、授業後の課題に取り組めるのかによって、生活の変化は違います。今回扱った研究の成績の差は、移動時間の削減だけを取り出した結果ではありません。余裕ができたことは生活上の利点として受け止め、学力については自分で解ける範囲や、質問が解消したかを別に記録すると判断しやすくなります。
画面では集中しにくいと言われたら、対面に変えるべきですか
まず、説明を聞いている間なのか、自分で解いている間なのか、集中が途切れる場面を確かめます。課題が難しくて止まる場合と、やり取りの方法が合わない場合では、調整する点が違います。本人の負担が続くなら、課題や授業の進め方の変更とともに、対面を含めた学び方を検討します。オンラインを続けること自体を目標にせず、疑問を伝えて学習を進められる方法を選びます。
この記事の限界
測定された成果は数学や読みの学力、学習行動などで、研究ごとに対象と指導期間、比較相手が異なります。スペインや米国の中学生、ドイツの大学生、年齢層の広い授業研究を含むため、日本の小中高生の個別指導で同じ伸びが生じるかは、これらの結果だけでは定まりません。
対面と遠隔を同じ指導条件で直接比べた根拠と、遠隔の支援を追加した根拠には違いがあります。本人の疲れや質問の難しさが続く場合は、その場面を記録して学校の先生や必要に応じた専門家と共有し、学習を続けられる条件の調整につなげます。 画面越しに説明を聞いた後、本人が自力で進めた箇所と、まだ質問したい箇所を区別できますか。
参考文献
- Gortazar L, Hupkau C, Roldán-Monés A. Online tutoring works: Experimental evidence from a program with vulnerable children. Journal of Public Economics. 2024;232:105082. doi:10.1016/j.jpubeco.2024.105082
- Means B, Toyama Y, Murphy R, Baki M. The Effectiveness of Online and Blended Learning: A Meta-Analysis of the Empirical Literature. Teachers College Record. 2013;115(3):1-47. doi:10.1177/016146811311500307
- Kraft MA, List JA, Livingston JA, Sadoff S. Online Tutoring by College Volunteers: Experimental Evidence from a Pilot Program. AEA Papers and Proceedings. 2022;112:614-618. doi:10.1257/pandp.20221038
- Hardt D, Nagler M, Rincke J. Tutoring in (online) higher education: Experimental evidence. Economics of Education Review. 2023;92:102350. doi:10.1016/j.econedurev.2022.102350
わからなくなった単元まで、講師と二人で戻ってやり直す。
- 向く人: 集団授業で質問できないまま進み、どこでつまずいたのか分からなくなった中学生・高校生
- 向く人: 苦手な科目を、つまずいた単元まで戻って一対一でやり直したい人
- 向かない人: 大勢と競い合う中で力が出る子や、集団授業の速い進度を求める人
- 向かない人: 塾に通うだけで成績が変わると考え、家で手を動かす時間を取れない人
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よくある質問
対面との差が有意でないなら、同じ効果と考えてよいですか
差が有意でない結果と、同じ程度の効果が確かめられた結果は区別します。Meansら(2013)の完全オンラインと対面の比較は、差が明確に出なかったという読み方になります。同等と言うためには、どの程度の差まで同等とみなすかを決め、その範囲に収まるかを調べる必要があります。家庭で選ぶ際には、同じという言葉だけで安心せず、課題への取り組みと続けやすさを見比べます。
通う時間が減れば、その分だけ成績も上がりますか
移動が減って生まれた時間を、実際に何へ使えるかを考えます。休息に回せるのか、授業後の課題に取り組めるのかによって、生活の変化は違います。今回扱った研究の成績の差は、移動時間の削減だけを取り出した結果ではありません。余裕ができたことは生活上の利点として受け止め、学力については自分で解ける範囲や、質問が解消したかを別に記録すると判断しやすくなります。
画面では集中しにくいと言われたら、対面に変えるべきですか
まず、説明を聞いている間なのか、自分で解いている間なのか、集中が途切れる場面を確かめます。課題が難しくて止まる場合と、やり取りの方法が合わない場合では、調整する点が違います。本人の負担が続くなら、課題や授業の進め方の変更とともに、対面を含めた学び方を検討します。オンラインを続けること自体を目標にせず、疑問を伝えて学習を進められる方法を選びます。