- 同性の教員が担当する教科で、学力や教科への関与が高かった米国の研究があります。
- 女子の算数では、女性教員の数学の背景によって結果の方向が変わりました。
- 英国の研究では、同性の教員が教科への態度を良くするという説はほとんど支持されませんでした。
- 性別の希望、安心して話せること、学習内容の理解を分けて記録します。
- 本人が嫌がる組み合わせを、成績のためという理由で押し通さないことが大切です。
塾の講師は同性のほうがよいのか|講師と生徒の性別の組み合わせの研究
「同性の教員への割り当ては、女子と男子の双方の学力を有意に改善する」――Dee(2007)の抄録の一節を日本語に訳したものです。日曜の朝、武蔵境で子どもの塾を探す保護者がこの一文を読むと、講師の性別を選ぶ基準にしたくなるかもしれません。娘には女性、息子には男性の講師を選ぶと、成績が伸びやすいのでしょうか。
同性であることだけを理由に講師を選ぶより、本人が希望する理由と、その教科を学べているかを分けて確かめるほうが、研究の結果に沿った判断になります。 同性の教員が担当した教科で良い結果が出た研究がある一方、教員の数学の背景によって女子の算数の結果が異なった研究もあります。教科への態度を調べた別の研究では、同性の組み合わせを支持する結果はほとんど得られていません。成績、教科への関心、話すときの安心感は、それぞれ別に見たい項目です。
子どもが性別について希望を伝えたとき、その言葉は選ぶための大切な材料です。同時に、希望の理由を保護者が先回りして決める必要はありません。研究の比較の仕方を読み解きながら、本人の希望を尊重して学習の様子を確かめる手順を考えます。
要点
- 同性の教員が担当する教科で、学力や教科への関与が高かった米国の研究があります。
- 女子の算数では、女性教員の数学の背景によって結果の方向が変わりました。
- 英国の研究では、同性の教員が教科への態度を良くするという説はほとんど支持されませんでした。
- 性別の希望、安心して話せること、学習内容の理解を分けて記録します。
- 本人が嫌がる組み合わせを、成績のためという理由で押し通さないことが大切です。
同性なら教わりやすいという考えを分解する
同性の大人には悩みを話しやすい、身近な手本になってくれる、と考える保護者もいるでしょう。ただ、この考えには、話しやすさ、将来の手本、教科の理解という異なる期待が含まれています。たとえば生活上の相談がしやすいことと、算数の説明を理解しやすいことは、確かめる場面が違います。講師を選ぶ前に、性別をそろえることで何を期待しているのかを言葉にすると、判断の焦点が定まります。
研究でいう同性の組み合わせは、記録された教員と生徒の性別が一致している組み合わせです。その組み合わせに本人が安心したのか、同じような経験を持っていたのかまで、言葉自体に含まれているわけではありません。保護者が同性の講師に期待することと、研究で比較している条件を区別して読む必要があります。性別が同じという分類だけで、その子が求める関わり方を説明し切ろうとしないことが出発点です。
家庭で考える際には、まず今ある困り事を性別の言葉を使わずに書いてみます。間違えた答案を見せにくい、説明の途中で止めて聞き返せない、学習以外の話題を避けたい、などの形です。そのうえで、本人が講師の性別と結びつけて考えているかを聞きます。先に保護者の望む答えを示すより、何を変えてほしいのかを子どもの言葉で残すほうが、希望を具体的に伝えられます。
これは性別への希望を小さく扱うための整理ではありません。本人が同性を望むなら、その希望と、授業で必要な配慮の両方を伝える形にします。性別に希望がない子には、どちらかを選ばせる必要もありません。選ぶ条件は子どもごとに違ってよく、娘と息子で機械的に組み合わせを決める必要はないのです。
米国の研究は同じ生徒の教科を比べた
Dee(2007)は、米国の中学2年生の全国調査を使い、同じ生徒の2教科を比べました。ある生徒が同性の教員に習う教科と、異性の教員に習う教科について、同じ時期の学習結果を比較する方法です。結果は、女子も男子も、同性の教員に習う教科で学力が高いというものでした。教員から見た生徒の学習状況の評価や、生徒がその教科に関わろうとする姿勢についても良い結果が報告されています。
この比較の工夫は、別々の家庭の子どもを単純に並べる方法との違いにあります。同じ子どもなら、家庭環境など、その時点で教科をまたいで共通する条件をそろえて考えられます。数学を習う子と国語を習う別の子を比べる場合より、本人に共通する背景の違いに結果が左右されにくい設計です。研究の結論を読むときは、同性の組と異性の組という名前だけでなく、何をそろえた比較なのかにも注目したいところです。
学力と教員からの評価が別の項目として扱われている点も役立ちます。答案で示される理解と、大人が授業中に受ける印象は、同じものではありません。家庭でも、講師から意欲的だと言われたことと、子どもが問題を自力で説明できたことを別々に残すと、何が変わったのかが見えます。好意的な評価を受けたことだけで学力の変化を代用せず、それぞれの材料を生かす見方です。
Dee(2007)の結果は、同性の組み合わせを検討する理由になります。ただし、同じ生徒でも教科への得意不得意は異なり、この調査は日本の塾で担当者の性別だけを変えた実験ではありません。家庭での次の行動は、同性なら伸びると約束することではなく、本人の希望を聞いて学習の変化を具体的に見ることです。研究が示した比較を、希望する講師への期待と混同しない姿勢が必要です。
算数の結果は教員の数学の背景で異なった
Antecol・Eren・Ozbeklik(2015)は、小学校で無作為な割り当てを行った実験のデータを用い、女性教員に習うことと学習結果との関係を調べました。無作為な割り当てとは、くじ引きのような方法で担当する組を分けることです。女子の算数では、数学の背景が強くない女性教員に割り当てられた場合、比較相手より学年末の点が低くなりました。同じ女子と女性教員の組み合わせでも、教員の数学の背景が強い場合には、その負の結果が消え、弱いながら正の方向になりました。
この結果で注目したいのは、女性教員という分類の中でも結果が異なることです。数学をどの程度学んできたかという教科の背景を加えると、性別だけでまとめた説明では捉えにくい違いが現れました。ここから家庭の確認項目を考えるなら、性別を希望することに加え、苦手な内容をどのように説明してもらえるかを見ることになります。問題が解ける講師かという印象だけでなく、子どもの途中の考えを扱う説明にも目を向けられます。
同じ研究で、男子の算数と読み、女子の読みについては、女性教員に習うことの影響は認められませんでした。Antecol・Eren・Ozbeklik(2015)の結果は、性別と教科を組み合わせて読むことで違いが明確になります。成績の話をするときは、誰の、どの教科の結果かを一緒に覚えておく必要があります。女性教員か男性教員かという大きな括りに戻してしまうと、研究で見えてきた条件の違いが失われます。
講師の性別について希望があり、算数にも困っている場合は、両方の条件を並べて考えます。希望する性別であっても、説明が速すぎて途中を追えないなら、その困り事を伝える必要があります。反対に、子どもが解き方を自分で説明できるようになっているなら、その学習の進み方を記録します。教科の背景を重視する研究の読み方は、性別による評価を教科についての具体的な確認に戻してくれます。
教科への態度を測ると同性の利点は明瞭ではなかった
Carrington・Tymms・Merrell(2008)は、英国のイングランドで11歳の子どもがいる413学級を調べました。対象のうち113学級は男性教員、300学級は女性教員が担当していました。子どもへの質問紙で調べたのは、学校や読み、算数、理科に対する態度です。子どもの能力や家庭の背景などを考慮して分析しても、男性教員は男子に、女性教員は女子に良い態度をもたらすという考えはほとんど支持されませんでした。
ここでの態度とは、教科や学校をどう受け止めているかを指します。テストで何点取れたかを中心に比べる研究とは、測るものが違います。同性の大人が教えればその教科を好きになる、という期待を考える際に役立つ結果です。成績を扱った研究と並べるときも、同じ物差しで結論が食い違ったのか、違う物差しを使ったのかを見分ける必要があります。
根拠を並べると、同性という条件以外に何を見たかがはっきりします。以下では、良い結果が報告された比較と、期待を支持しなかった比較を分けています。研究の対象と測った項目を一緒に読むと、家庭で確かめたいことに近い結果を選びやすくなります。
| よくある期待 | 研究で得られた結果 | 比べた相手・条件 | 対象と測った項目 |
|---|---|---|---|
| 同性の教員なら学習結果が良い | 同性の教員が担当した教科で良い結果 | 同じ生徒が異性の教員に習う教科との比較 | 米国の中学生の学力・教員の評価・教科への関与。Dee(2007) |
| 女子には女性教員が良い | 数学の背景が強くない女性教員では算数に負の結果 | 男性教員との比較に、女性教員の数学の背景の違いを加えて検討 | 小学生の算数と読み。Antecol・Eren・Ozbeklik(2015) |
| 同性の教員なら教科を好きになる | 同性の組み合わせを支持する結果は乏しい | 男性教員と女性教員の担当学級を、生徒の性別も含めて比較 | イングランドの学校・教科への態度。Carrington・Tymms・Merrell(2008) |
性別を優先しすぎる選び方が合わない場合
本人が性別を希望している場合と、保護者だけが希望している場合は、出発点が異なります。子どもが今の担当者に困っていないのに、同性のほうが伸びるはずだと変更を求める前には、変える目的を確かめたいところです。教科の理解を改善したいのか、相談のしやすさを整えたいのかで、必要な対応は違います。本人の望むことを聞く前に組み合わせを決めると、困り事のない部分まで動かすことになりかねません。
同性の相手だからこそ、間違いや弱みを見せにくいと子どもが話す場合も、希望をそのまま受け取ります。逆に、異性の相手では緊張すると言う場合は、慣れればよいと急がせず、学習の場で何が負担なのかを聞きます。理由を詳しく説明したくないときには、説明を選択の条件にしない配慮が必要です。安心して学ぶための希望を尊重することと、性別によって成績の伸びを決めつけることは、切り分けて考えられます。
性別から教え方まで予想するのも避けたい判断です。女性なら穏やか、男性なら厳しい、といった予想を先に置くと、実際の説明や子どもの反応を見落としやすくなります。必要なのは、間違いを指摘するときの言葉や、質問を受けたときの応答を具体的に確かめることです。本人が嫌だった言葉を話したときも、相手の性別による特徴と解釈する前に、その場で何が起きたのかを聞きます。
家庭での判断としては、本人の希望を保ちながら、学びにくさを生んでいる条件を変えていく方法が考えられます。説明が速いなら速度、話題が負担なら扱う話題、担当者への緊張が強いなら担当の組み合わせを検討します。すべてを性別の問題にまとめるより、変えてほしい点を具体的に伝えられます。性別を希望した本人に、選んだのだから我慢するよう求めないことも大切です。
本人の希望と授業中の事実を別々に残す
日曜の朝に親子で整理するなら、まず講師の性別に希望があるかを、答えを誘導しない形で聞きます。希望がある場合は、話せる範囲でその理由を聞き、保護者の解釈を足さずに残します。今は決めたくないという答えも、その時点の希望として扱えます。そのうえで、次の授業で何ができると学びやすいのかを具体的にします。
確認の順番は、希望、授業中の様子、理解した内容という流れにすると混ざりにくくなります。性別の希望が満たされたかだけで評価を終えず、子どもが困り事を言えたか、説明を受けてどう考えたかを記録します。記録は短い言葉でよく、毎回同じ答えを求める必要はありません。次の項目は研究で検証された採点表ではなく、家庭で話を整理するための確認欄です。
- 性別に希望があるか、今は希望がないかを本人の言葉で残す。
- 間違えた箇所を示して、どこまで理解したかを伝えられた場面を書く。
- 説明の途中で聞き返せたか、聞き返したかったのに止めたかを記録する。
- 習った内容を自分の言葉で説明したり、解き直したりした様子を残す。
- 続けたい点と変えてほしい点を分け、性別の希望に変化があれば書き添える。
たとえば、同じ性別になって安心したという感想と、まだ問題の説明は難しいという感想は、並んでいてよいものです。安心したから学習面の困り事を伏せる必要はなく、解けたから緊張を無視する必要もありません。記録を伝える際には、性別の希望と授業への要望を別々の文にすると伝わりやすくなります。大人の側も、希望が満たされたという理由だけで、本人の感想を先取りせずに済みます。
見直すときは、担当者への希望が変わったのか、教科や単元が変わって難しくなったのかも分けます。成績の上下だけで講師の性別に原因を求めず、答案や解き直しの様子と照らして話します。親子の意見が違うなら、保護者の期待と本人の困り事を別々に書いたまま相談につなげられます。性別を合わせることを到達点にせず、本人が望む条件で学習を進められることを判断の中心に置きます。
よくある質問
娘が女性の講師を希望したら、希望を優先してよいですか
本人の希望として尊重し、話せる範囲で理由を聞くところから始められます。成績が上がる根拠を子どもに示させる必要はなく、安心して話したいという希望も選ぶ材料になります。そのうえで、性別の希望と教科の理解は分けて確かめ、希望がかなった後にも学びにくい点を聞きます。同性を選んだことを理由に、説明が追えない、質問をしにくいといった困り事を本人に我慢させないことが大切です。
息子には男性の講師を選ぶべきでしょうか
男子だから男性の講師を選ぶべきだという結論にはなりません。同性の教員で学習結果が良かった研究はありますが、教科への態度を扱った研究は同性の利点をほとんど支持していません。本人が性別を気にしていないなら、保護者から希望を作る必要はなく、授業で何に困っているかを聞けます。男性の講師を本人が希望する場合も、期待する理由と実際に学べている内容を分けて見る方法が役立ちます。
性別より教科の指導を重視すればよいのですか
教科の理解を確かめることは大切ですが、本人が安心して学べる条件も一緒に考えます。数学の背景によって結果が違った研究は、性別だけで教科の指導を判断しない理由になります。家庭では、希望する組み合わせを伝えたうえで、苦手な箇所への説明や解き直しの様子を見ていけます。本人の希望か教科の理解かという二者択一にせず、希望を保ったまま学習上の困り事を具体的に相談する形が考えられます。
この記事の限界
適用範囲は海外の学校の教員と児童生徒の組み合わせであり、ここで取り上げた研究は日本の塾の個別の講師と生徒を直接調べたものではありません。同時期の教科間比較、学年末の成績、教科への態度では観察の時点も測定内容も異なり、家庭で期待できる伸びの大きさや持続期間を共通の数値で示すことはできません。
性別に関わる不安が強く授業で話せないなど、個別の事情がある場合には、本人が伝えてよいと考える範囲を確かめながら、学校の先生や相談の専門家と学ぶ条件を考える必要があります。研究の平均的な結果とは分けて、本人の希望と授業中の具体的な様子を判断の土台にします。 希望する性別を聞いた後に、本人が安心して質問できた場面や、説明を追いにくかった場面も聞けていますか。
参考文献
- Dee TS. Teachers and the Gender Gaps in Student Achievement. Journal of Human Resources. 2007;42(3):528-554. doi:10.3368/jhr.XLII.3.528
- Antecol H, Eren O, Ozbeklik S. The Effect of Teacher Gender on Student Achievement in Primary School. Journal of Labor Economics. 2015;33(1):63-89. doi:10.1086/677391
- Carrington B, Tymms P, Merrell C. Role models, school improvement and the ‘gender gap’—do men bring out the best in boys and women the best in girls? British Educational Research Journal. 2008;34(3):315-327. doi:10.1080/01411920701532202
わからなくなった単元まで、講師と二人で戻ってやり直す。
- 向く人: 集団授業で質問できないまま進み、どこでつまずいたのか分からなくなった中学生・高校生
- 向く人: 苦手な科目を、つまずいた単元まで戻って一対一でやり直したい人
- 向かない人: 大勢と競い合う中で力が出る子や、集団授業の速い進度を求める人
- 向かない人: 塾に通うだけで成績が変わると考え、家で手を動かす時間を取れない人
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よくある質問
娘が女性の講師を希望したら、希望を優先してよいですか
本人の希望として尊重し、話せる範囲で理由を聞くところから始められます。成績が上がる根拠を子どもに示させる必要はなく、安心して話したいという希望も選ぶ材料になります。そのうえで、性別の希望と教科の理解は分けて確かめ、希望がかなった後にも学びにくい点を聞きます。同性を選んだことを理由に、説明が追えない、質問をしにくいといった困り事を本人に我慢させないことが大切です。
息子には男性の講師を選ぶべきでしょうか
男子だから男性の講師を選ぶべきだという結論にはなりません。同性の教員で学習結果が良かった研究はありますが、教科への態度を扱った研究は同性の利点をほとんど支持していません。本人が性別を気にしていないなら、保護者から希望を作る必要はなく、授業で何に困っているかを聞けます。男性の講師を本人が希望する場合も、期待する理由と実際に学べている内容を分けて見る方法が役立ちます。
性別より教科の指導を重視すればよいのですか
教科の理解を確かめることは大切ですが、本人が安心して学べる条件も一緒に考えます。数学の背景によって結果が違った研究は、性別だけで教科の指導を判断しない理由になります。家庭では、希望する組み合わせを伝えたうえで、苦手な箇所への説明や解き直しの様子を見ていけます。本人の希望か教科の理解かという二者択一にせず、希望を保ったまま学習上の困り事を具体的に相談する形が考えられます。